トイ種の骨折治療 ーロッキングプレートの導入ー
最近は、ソファや抱っこ中の落下などの家庭内でのちょっとしたトラブルで骨折する子が増えています。
そして、体重が2kg以下の「超小型犬」であるチワワ、トイプードル、ポメラニアン、ヨークシャテリアなどで骨折が増えています。この子たちの骨折治療を行うには、従来の古典的プレートでは当院では完治していますが、非常に困難であり、癒合不全となり治らない子もいる現状です。
当院では、超小型犬(2.5kg以下)の橈骨・尺骨骨折の治療のために、
より正確で確実な骨折整復を目指すため、
DePuy Synthes社のLCP(Locking Compression Plate)Systemを導入しました。
超小型犬の骨折の治療を行う場合には、適切な治療法の選択やインプラントの選択が非常に重要と考えられます。
一般に骨折治療では骨径に対して40%程度のスクリューホール径が望ましいと考えられ、超小型犬の場合では骨径が5-6mmの症例も多く存在し、1.5mmのスクリュー、そのスクリューに適したプレートの選択が必要です。
LCPシステム
Locking Compression Plate(SYNTHES社製)
LCP(ロッキングプレート)とは
LCPは、プレートにスクリューをロッキングさせて固定するLocking Plateと従来のDCP(Dynamic Compression Plate)の機能を併せ持つ新しいコンセプトのプレート&スクリューシステムで以下の特徴があります。
特徴1 骨膜上の血流の温存
従来のプレートはスクリューでプレートを骨に押し付ける摩擦力によって固定性を得ていました。LCPはロッキングスクリューとプレートの角度安定性によって骨折部を固定するため、プレートを骨に圧迫させる必要がありません。またプレートの裏側はプレートと骨の接触面積が少なく設計されております。(2.0mmLCP以上のサイズ)
したがって骨癒合に必要なプレート下の骨膜栄養血管の障害が少ないことからよりスムーズな骨治癒を実現できます。
特徴2 アングルスタビリティー
プレートとロッキングスクリューが適切な角度で固定されることで高い角度安定性が得られます。
このことから従来型のプレートと比較して粗しょう骨における固定性の向上が期待できます。
特徴3 コンビネーションホール
ひとつのホールでロッキングスクリューとスタンダードスクリュー(従来の皮質骨スクリューや海綿骨スクリュー)の使用を選択できる形状です。
ロッキングホールはねじ山がきってあり、頭部分にねじ山のあるロッキングヘッドスクリュー(LHS)を使用でき角度安定性をもたらす固定が出来ます。
ダイナミックコンプレッションホールはスタンダードスクリューが使用できます。
偏心性にスクリューを挿入すると軸方向の圧迫を起こさせる(骨切部位の間隙を少なくし癒合しやすくする)ことができます。
またスクリューの挿入方向を傾斜させる事が出来るため関節付近でも使用(関節内にスクリューが侵入していかないように調整)でき、二つの骨片を引き寄せるラグスクリューも行えます。
スタンダードスクリューを使う事でプレートへの骨片の引き寄せも行えます。
一つのプレートシステムで様々な骨折整復に対応できるといえます。
特徴4 ルーズニング防止
ロッキングスクリューを用いる事によりスクリューのマイクロモーションを低減します。これにより、骨粗鬆症や多骨片骨折におけるスクリューのルーズニングやバックアウトを防止します。
特徴5 手術時間短縮
骨にプレートを圧着させなくていいという事は、正確なカントゥアーリング(プレートを骨の形状に合わせて3次元に曲げる事)が必要なくなります。このことと、ロッキングヘッドスクリュー(LHS)がセルフタッピングなので骨孔にスクリューを入れる前にねじ山を作製(タッピング)する必要がないことで、手術時間の短縮につながります。
術者のストレス低減と何より動物の麻酔侵襲の低減につながります。これも大きなメリットです。